いつの時代もイエスかノーで答えを出せない問いがある。
例えば、『大人になった男性と女性の間に友情は成立するのか』という問い。
期間限定であれば成立するような気がするし、お互いに信頼できるパートナーがいるのであれば無期限に成立しそうだ。
とはいえ、お互いのパートナーを抜きにして2人で会うと「W不倫だ」とか言われかねない。
「ありえない」という大多数が使う言葉とか。
「大人の男女が時間を共にするのは色恋の感情があるもの」という思い込みとか。
きっと、本人たちの気持ちや様々な事情を理解しようとしない世間が大人の男女の友情を成立させない土壌を作っているのではないだろうか。
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僕にはちょっぴり不思議な関係の女性の友人がいる。前の妻と別れて婚活をしていた時に知り合った奈波さんだ。
それは友情なのかかといえば少し違うような気がする。
もちろん恋愛関係ではなく、『心友』と言うものに近いかもしれない。
奈波さんとは年に一度だけ会って、お互いのことを報告したり、励ましあったりする関係なのだ。
たった一人ための専属の応援団長みたいな。
「そんな関係も素敵ね。うん、ありだと思う」
「この関係に名前を付けるとしたら・・何だろう」
「名前なんて、いいじゃない」
とにかく、お互いの合意の上で緩やかな二人の友情がはじまった。
もう、20年近くその関係は緩く続いている。
けれど、その関係もそろそろ見直すというか、終わりにする時期に来ているのかもしれない。
この一年間じっくりと考えて出した僕の結論。これを伝えたら、奈波さんはどのようなリアクションをとるのか楽しみだ。
会う約束の時間まで40分ある。いつもより早めに来てカウンターに座ったのは、心を落ち着かせるためだ。
普段は店の外で待ち合わせて一緒に店に入る。席に案内されてからその日の気分でワインの銘柄を選ぶ。
カウンターに案内されジンベースのカクテルを頼んだ。鮮やかなグリーンのミントが添えられたカクテルを一口だけ含みゆっくりと飲み込んだ。
そうだ、奈波さんにメッセージしておこう。
「早く着いたから、先に店に入って飲んでいる」
「先に入って一杯やってるなんて、ひどい！」
速攻で返信が来た。奈波さんがちょっぴり拗ねる表情が浮かび、僕は目を細めた。
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