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  1. 創作ストーリー

白いティーカップ‐4

白いティーカップ‐3

麻優が就職した会社は、1年後に業績悪化のために業務縮小やリストラが行われるようになった。どの部署も正社員はギリギリの人数で業務を回すようになり、麻優の残業が少しずつ増えていった。

もともと男性優位の社風で有給休暇や育児休暇も取りづらい雰囲気だったこの会社は、結婚している女性社員はいるが、子供はいない人ばかりだ。
妊娠や出産を機会に退職をする人だけではなく、早々に見切りをつけて転職したり、結婚したり出産退職で麻優の同期女性はどんどん減っていった。

こんなはずじゃなかった。一流の会社に入れば、お給料も高いし出会いたくさんある。おしゃれをして素敵な恋をして28歳くらいで結婚するのだと思っていた。
仕事自体は好きだしお給料は良かったので転職が、相変わらず平日は残業が多く、きっちり週休二日といっても気持ちの余裕は奪われたままだ。

恋愛を考える余裕もなく、毎日疲れた毎日を積みかさね。気が付けば20代最後の年齢になっていた。給料の高さだけで会社を選んだ自分、仕事にのめり込み過ぎた自分を今更ながら後悔した。

「明日は、やっと休みだ」

明日も会社だと思うと気が滅入るし帰宅する時の足取りも重いのだが、今日はちがう。久しぶりの三連休の前日だ。ほんの少し足取りが軽い。

電車の座席に座ると、急に身体に力が抜けて視界がぼんやりとしてきた。降車駅に着くまで眠ろうと目を瞑った時、人の気配とほんのりアルコールの匂いを感じた。薄目を開けると、白いシャツを着た大学生くらいの男性が立っているのが見えた。

週末の終電は、お酒を飲んで帰る人が普段より多い。車内に広がるアルコールの匂いだけでお酒が苦手な麻優は酔っぱらったような気分になってしまう。バッグからハンカチを取り出し、鼻に当てた時前に立っている男性に声を掛けられた。

「こんばんは。お姉さん。僕はユウジって言います。実は、あなたにお願いがあって・・」
「は?」
「僕、恋人が欲しいから探すことを手伝ってくれませんか?」

えーっと。ユウジさん、あなたは酔っぱらっていますよね。ごめんなさいね。私はあなたのことを知らないし、仕事で毎日忙しくて死にそうなの。初対面の人に、お願いって何?第一、どうやって手伝えばいいのかわからない。あ、私?いやいやいや。私はあなたの恋人にはなれないし。

戸惑った麻優は、脳内で忙しく繰り広げられた一人会話を振り払い、少し怒った口調で答えた。
「「私自身に恋人がいないのに、なぜ見知らぬあなたの恋人探しに付き合わなくてはいけないの? 居眠りの邪魔をしないでくれるかな」
「そうですよね・・・」

聞えるか聞こえないかの小さな声で言ったユウジという男性は、寂しそうな顔をして麻優の前から立ち去って行った。イライラが混じったため息を大きく吐き出した麻優は、再び目を瞑った。

続きはこちら 白いティーカップ‐5

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