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  1. 創作ストーリー

【ショートストーリー】夢の中の夫婦バトル

〔あれ? 夢だったのか〕

バタン!  

妻が勢いよくドアを閉める音にびっくりして僕は瞬きをした。すると、目の前の景色が変わっていた。

見慣れた白い天井と木目調の壁。ワンルームに置かれた広めのシングルベッドの上で僕は目覚めた。

「あれ?なんだ、夢だったのか?それとも、未来へタイムスリップしていたのか?」

それにしても、プロポーズをする予定の前日に、こんな夢を見るなんて何ということだろう。

僕の隣では妻が、いや、紗香(さやか)が小さく寝息を立てていた。そうだ、昨晩から彼女が泊まりに来ていたのだった。今日はこれから二人で1泊だけの旅行へ行く。待ち合わせするより一緒に家を出るようにした方が安心だから泊まりに来てもらった。

まだ朝の5時前だが、そろそろ起きて支度をしよう。辺りは薄暗い。僕は、静かに起き上がり紗香を起こさないように注意深くベッドから離れると洗面所へ行き顔を洗った。

洗面所から戻ると、紗香も目を覚ましておりベッドに座って背伸びをしたり肩を回したりしていた。

「おはよう、翔太。早起きだね」
「紗香、おはよう。なんだか眠れなくて早起きしちゃった」
「遠足前の子供みたいだね」
そういって、寝起きの顔を気にすることなく紗香は子供のように笑った。

普通女性は、化粧をしていないすっぴん顔を彼氏に見せたくないものだと聞いていたが、普段から薄化粧の紗香はすっぴん顔を僕にさらすことも気にならないようだ。

まあ、自慢じゃないが彼女は、もともと顔立ちが整っていて可愛らしい。デートの時、たまに気合を入れたメイクをしてくるのだが、その時は男性だけでなく女性も彼女を視線で追うようなしぐさを見せる。

それはさておき、夢の中で僕は紗香と夫婦で、社会人になった息子がいた。キッチンとリビングの間取りの事で喧嘩していた時の彼女は今の可愛さを残しつつも、しっかりとした母親の顔をしていた。

そうか、結婚したら2人の生活からスタートして、子供が生まれて成長して、巣立っていったあとまた二人の生活に戻る。
そう思うと、家はその時々に合わせて住み替えるか、老後の状態をイメージしてよく考えて建てるものなのかもしれないと思った。今見た夢の影響だな。

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